いつ左右が逆になるか

鏡の前に立ち、手にした掛時計を目の前にかかげて「普通に」見てみます。もちろん、12が上にあり、6は下、3は右、9は左にあります。このとき、鏡には時計の裏側が映っていて、文字盤は映っていません。時計を映して見るには、文字盤を鏡に向ける必要があります。そこで、“素直に”時計を鏡に向けてみます。すると、いつも見ている左右が逆になった時計(12が上、6が下、3が左、9が右)が映ります。

しかし、このとき、実物と鏡像を比べるとどうでしょう。今、鏡に向けて手に持っている時計の3は自分から見て(直接は見えませんが)どちら側にあるかというと、左です。そして、9が右にあります。つまり、先ほど確認したように、実物と鏡像では左右が(上下も)一致しています。

このように、「時計を鏡に映すと左右が逆になる」と言うのは、裏返しにする前の時計と比べた場合の話であることがわかります。したがって、実際に起っていることは、「時計を鏡に映すと左右が逆になる」のではなく、「左右を逆にした時計を鏡に映して見ている」のだと言えます。

同様に、バックミラーに映る車のナンバーも、鏡に映す以前にすでに自分にとって左右が逆になっていることがわかるはずです。では、鏡に映る自分の顔は? 自分の姿は少し事情が特殊なので後で別に考えてみます。

すでにお気付きのように、“素直ではなく”、つまり時計を上下方向に裏返して鏡に向けると、鏡には上下だけが逆になった文字盤が映ります。また、時計を鏡に向かい合う壁に掛け、“素直に”振り向けば左右が逆の時計が鏡に映って見えますが、上半身をかがめて股の間から鏡をのぞくと、上下が逆の時計が見えます。*1 では、自分の顔は? 自分の顔を鏡で上下逆に見るのは難しそうです。やはり自分の姿は少し事情が異なるようです。

これで、“いつどのように”左右または上下が逆になるのかを理解できたと思います。*2

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*1 実物と鏡像は前後方向が逆なので、実物から鏡像に向き直ると、自分の視線が前後逆になりますが、このとき上下または左右のどちらかも逆になってしまいます。xyzの3つの軸のうち1つを固定して回転させると、残りの2つの軸がどちらも回転してしまうわけです。鏡のように1つの軸だけを逆転させることはできません。これは、“この世界の特性”としか言いようがないですね。
*2 鏡に映った時計が左右逆に見える場合、実際は、「左右を逆にした時計を鏡に映して見ている」@と説明しました。しかし、右の写真には、(左右が逆でない)普通の時計と、その左右が逆になって鏡に映った時計が見えています。
この写真の場合は、「時計の左右方向」が「鏡の前後方向」と一致しており、「前後方向を逆転させる」という鏡の機能によって鏡像の左右が逆になっているAわけです。現実に見る鏡像は、@Aの中間であることが多いようですね。