上下と左右の認識の違い

右の図@の時計を見てください。どうなっていますか? 「逆さになっている」と答えた人が多いと思います。何が逆になっていますか? 「上下が逆」と答えたのではないでしょうか。少なくとも右の図を見て「左右が逆」と答えた人はまずいないと思います。しかし、正確には通常の文字や時計と比べて180度回転されているわけで、上下だけでなく左右も逆になっています(3が左にあり、9が右にある)。 図@

右の図Aの時計は「左右が逆」です。そして、図Bの時計が本来の「上下が逆」のはずです。ではなぜ、一般には@の時計を「上下が逆」と言うのでしょう???

これは単なる「表現の問題」ではありません。たとえば、左のポスターの文字は上下が逆ですね。では左右はどうなっているか、と聞かれたらどう答えますか?

おそらくすぐには答えられなかったと思います。しかも、「左右はそのまま」と言う人もいれば、「左右も逆」と言う人もいたのではないでしょうか。
図A
図B


上のポスターは、「黒光り」という文字が左から書かれていることからもわかるように、「上下だけが逆」になっています。しかし、これを見てすぐに「左右はそのまま」と認識する人はほとんどいないのではないかと思いますし、「左右も逆」と答える人の感覚も理解できます。それはおそらく、図@のような“上下が逆”(正しくは180度回転)の状態と比べて「左右が逆」と感じたのではないでしょうか。別の見方をすれば、このポスターの「左右はどうなっているか?」と聞かれて回答に困るのは、何と比べて正逆を判断すればよいかに迷うからだと思います。

これらの例からわかることは、通常、人は左右より上下を優先して認識しているということです。そして、その上下を基準にして左右方向の正逆を判断しているフシがあります。

ところで、図Bは鏡に上下が逆になって映った状態と同じです。このような上下が逆になった鏡像は日常生活であまり頻繁には目にしませんが、目にしても、上で考えたように、上下と同様またはそれ以上に左右が逆になっている印象を強く受けている可能性があります。「鏡はいつも左右が逆になる」と感じる理由として、このような要因もあると思われます。

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